放射性セシウム用吸着材
プルシアンブルー型錯体(PBA)は、放射性セシウムの吸着材としてもよく知られています。効果が初めて報告されたのは1951年のことです。
1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故後には、牛乳や食肉中の放射性セシウム濃度低減のために何年にもわたり乳牛に投与されとされています。IAEAからは、プルシアンブルー(PB)を乳牛に与えた場合、搾取した牛乳中の放射性セシウム濃度が1/3以下になるとの結果も報告されています。
PBは体内で放射性セシウムを取り込んだ後、溶けずに糞として排出されることで、牛乳への放射性セシウムの混入を減らすのです。
PBAの最大の特徴は選択性です。セシウムはカリウムやナトリウムと同じ種類の一価アルカリイオンですが、セシウムを優先的に吸着することができます。その選択性があるからこそ、牛に投与しても体内で放射性セシウムのみを吸着し、除去することができるのです。
最適化でより高性能な吸着材へ
プルシアンブルーは、放射性セシウム除染目的で、多くの開発が進められています。国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下 産総研)では、ナノ粒子化、金属置換、欠陥の導入などにより、さらに性能を向上させることに成功しました。
吸着材研究開発元の産総研は、5~20nm程度の粒径を持つ、プルシアンブルーのナノ粒子の量産化に成功しました。
プルシアンブルーは、従来微結晶になりやすいものですが、その合成法を工夫し、特にセシウム吸着能が高いナノ粒子を合成し、スラリー状のものについては、現行装置でも年間約300トンの生産が可能である技術を確立したのです。
得られたナノ粒子を乾燥粉末化したものを用い、セシウム吸着性能を調べたところ、市販のプルシアンブルー、ゼオライトに比べ、桁違いの高い吸着性能を示しました。
参考(外部リンク):
IAEA資料「The use of Prussian blue to reduce radiocaesium contamination of milk and meat produced on territories affected by the Chernobyl accident」
産総研ナノ材料研究部門ナノ粒子機能設計グループHP「npfdグループの研究内容」